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2014年8月20日水曜日

子どもが被ばくを避ける権利と、国・県の不作為を問う「子ども脱被ばく裁判」がスタート

 「子ども脱被ばく裁判」(第二次ふくしま集団疎開裁判)の提訴についての記者会見が818日、参議院議員会館で行われました。

 国や県が、放射能拡散の情報を隠ぺいし、これまで十分な被ばく対策を行わなかったことに対する責任を追及し、ひとりあたり10万円の国家賠償を求めるとともに、県や市に対して子どもたちが安全な場所で教育を受ける権利があることの確認を求める裁判です。
 
8月29日に福島地方裁判所に提訴し、福島県内・外の原告数十名が参加する予定。
 
 2011年から2013年にかけて行われた「第一次ふくしま集団疎開裁判」では、仙台高裁が「郡山市の子どもは低線量被ばくにより生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される」と判決で認めながらも、訴えを却下しました。
 (ママレボ通信:
【ふくしま集団疎開裁判】判決文は、子どもたちの健康リスクを認めています

 今回の第二次提訴では、子どもたちの脱被ばくの権利が認められるのでしょうか。



■子ども脱被ばく裁判は、こんな裁判

 記者会見の冒頭、柳原敏夫弁護士が、福島とチェルノブイリを比較して「福島ではすでに、疑いも含めて甲状腺がんの子どもが89人も見つかっている。ベラルーシと比較すると40倍の発症率だ」と説明。「福島の子どもは、放射線によって命の危険にさらされており、戦争状態の中にいる」として、緊急に被ばく回避が必要であることを訴えました。

 続いて光前幸一弁護士が、「子ども脱被ばく裁判」の趣旨を説明。これによると、前回の「第一次ふくしま集団疎開裁判」と今回の「子ども脱被ばく裁判」の大きなちがいは、以下2つの点にあるということです。

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≪前回の裁判≫
前回は、郡山市の学校に通う子どもたち14人が原告となり、郡山市に対して「放射線量の低い安全な環境で教育を受けさせてほしい(疎開させてほしい)」と、仮処分を申し立てた。

≪今回の裁判≫
今回は、2つの裁判があります。

①、「安全な環境で教育を受ける子どもの権利を確認する裁判(子ども人権裁判)」。
→福島県の小中学校に通う子どもたちが原告となり、居住している各市町村に対して、安全な環境で教育を受ける権利があることの確認を求めるものです。
勝訴すれば、保護者と子どもが希望する場所で、安全に教育を受けられるように「避難」や「移住」の費用を求めていくことになります。

②、「原発事故後の国と県の放射能政策の違法性を問う裁判」(親子人権裁判)
→福島県に居住している(あるいは事故当時居住していた)子どもと保護者が原告となり、国と福島県に対して、無用な被ばくなどをさせたことや、精神的苦痛を与えたことに対する慰謝料(ひとり10万円)を請求する裁判です。こちらは、福島に住んでいる方だけでなく、すでに避難されている方も原告になれます。

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 今回の裁判では、なぜ、子どもだけでなく保護者も原告になることに決まったのでしょうか――。

 弁護団によると、原告になる保護者たちの強い希望として、「国や県の不作為を追求し、責任を認めさせたいという思いがあるから」とのことでした。

 福島県に居住している(あるいは事故当時居住していた)保護者たちは、(1)国が事故発生直後に、放射能拡散情報などを隠ぺいしたこと、(2)子どもにまで年間被ばく20ミリシーベルトを設定したこと、さらには(3)福島県がヨウ素剤を配らなかったことなどによって、無用な被ばくをさせられてしまった、という思いを事故後ずっと抱えて苦しんでいるのです。

 また、なぜ「ふくしま集団疎開裁判」から、「子ども脱被ばく裁判」に名前を改めたかというと、原告になる保護者から、「“疎開”と聞くと、行政によって強制的に移されてしまうイメージがある。行政のことはまったく信用できないので、避難・移住先は自分たちの希望で選びたい」という意見が多数上がったからだということです。
 口には出せないまでも、このように考えている福島県内の保護者は多いのではないでしょうか。
 
 弁護団によると、現在でも福島県内の通学路などには、1マイクロシーベルト毎時近いホットスポットがあり、事故後の初期被ばくなども合わせると外部被ばくだけでも高い数値になることが予想されるとのこと。さらに現在も、廃炉作業が行われている福島第一原子力発電所から放射性物質が飛散しており、吸い込む危険性があるため、こういったリスクも含めて訴えていくそうです。

■ 事故の責任を追及し、子どもを安全な場所で生活させたい

 また、この日の会見に参加した原告になる予定の保護者たちは、裁判に臨む思いを次のように訴えました。



 ○長谷川克己さん(47歳)郡山市→静岡県

 8歳になった息子とふたりで参加する。原発事故から3年半、行政が行ったことは理不尽の数々だった。事故後、多くの諸外国が80キロ圏外に避難を指示したのに、日本政府はなぜ2030キロの住民しか避難させなかったのか。なぜ、「ただちに影響はない」と繰り返したのか。なぜ、年間被ばく量を20ミリシーベルトにまで引き上げたのか。なぜ、今でも放射線量の高い地域に人を戻そうとするのか。このまま理不尽な状況に屈しているわけにはいかない。子どもは自分で守ると決めた。

 ○松本徳子さん(52歳)福島市→神奈川県

  “復興”という名のもとに、なにもかもなかったことにされようとしている。私たちの声が押し殺されようとしている。この裁判を機会に、どこに責任があるのかをはっきりさせたい。子どもたちを、少しでも放射線量が低いところに避難させないといけないという気持ちで、今回ここに立たせてもらった。しかし、これは福島県だけのことではない。汚染はどんどん広がっていく。だからこそ、みなさんのお力を貸してほしい。

 ○匿名 郡山市→東京都内
 
 郡山市内で、小さな医院を営んでいる。事故後は1か月ほど家族で避難したが、仕事や学校もあり、すぐに戻った。3年たったころに、ある病院で子どもの甲状腺を検査してもらったところ、多発性のう胞が見つかった。子どもに異変が起きたらすぐに避難しようと思っていたので、その帰りに物件を探しに行った。しかし、国が指示をしてくれないと動けないという人が多いのが現状。だからこそ、ひとりでも多くの方に、この裁判に参加してほしいと思っている。 

 
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 これまでの国や県の不作為を追求し、子どもには安全な場所で教育を受ける権利があることを問う今回の「子ども脱被ばく裁判」。
 このシンプルで当たり前の訴えが、認められる日本なのかどうか――。
 しっかりと見届けていく必要があるでしょう。

 この裁判には、現在福島県に居住している保護者・子どもだけでなく、県外に避難した方も参加できます。現在も、原告を募集していますので、詳細は下記をご覧ください。



 


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